下町イーハトーブ。

漫画家森山まみちのブログです。秋田書店ミステリーボニータにて宮沢賢治の物語「銀のノスタルヂア」を不定期掲載。只今育児休暇中。2016年6月より制作再開です。

「銀のノスタルヂアーイーハトーヴ幻想童話集ー」第二回掲載のお知らせ。

 

ミステリーボニータ 2014年 10月号 [雑誌]

ミステリーボニータ 2014年 10月号 [雑誌]

 

 

こんにちは!

ご無沙汰しておりました。お元気でしたでしょうか?

 

今年も異常気象が各地で大発生した夏・・・。

ゲリラ豪雨という名のスコールが起こったり、デング熱が流行中だったり、ナラ科の樹木が枯れてしまったせいで猛毒のキノコが各地で発生したり・・・。

 

春や秋がなくなりブナやナラの樹木が茂る森がどんどん減ってゆくのかなあ・・・と思うと、なんともいえないさびしい気持ちになります。

 

 

 

さて、前置きが少々長くなってしまいましたが、現在発売中のミステリーボニータ10月号にて

 

「銀のノスタルヂアーイーハトーヴ幻想童話集ー」

第二回 「イギリス海岸の巻」 62ページ

 

を描かせていただきました!

 

 

 

 

 

 

 

 

ミステリーボニータ 2014年10月号 | 秋田書店

 

ボニータ公式サイトでもささやかに紹介されておりますので、是非!!

 

 

f:id:misatohayashi:20140906115938j:plain

 

 

こちらは白黒版の予告カットです。

鉱物の岩質を調べている賢治さん。画像が小さくてすみません;;

 

 

いやはや、前回の発表から8か月も時間が経ってしまっていたのですね・・・。

 

 

ほぼ100%忘れられているだろうと感じつつの執筆でしたが、心温まる担当さんの励ましのおかげで(ほんっとうにお世話になりました!!涙!)なんとかかんとか形となって仕上げるができました!

とってもとっても安堵しております。^^;担当さん、ありがとう!!

 

 

今回のテーマは「イギリス海岸」。

イーハトーヴで賢治さんが愛した場所のひとつです。

 

もう一人の主人公である、編集者みのりちゃんの過去にも少し触れております。

 

 もし本屋さんでボニータを見かけましたら、ぜひぜひ!お手に取ってくださいまし!

今号のボニータも面白い作品が勢ぞろいでございますよ!!!

 

 

f:id:misatohayashi:20130920144528j:plain

 

f:id:misatohayashi:20130920143644j:plain

f:id:misatohayashi:20130514121741j:plain

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここからは今回のテーマに選んだ「イギリス海岸」のことについてしばし。

 

 

Tertiary the younger Tertiary the younger
Tertiary the younger Mud-stone


あおじろ日破れ(ひわれ) あおじろ日破れ
あおじろ日破れに おれのかげ

Tertiary the younger Tertiary the younger
Tertiary the younger Mud-stone


なみはあをざめ 支流はそそぎ
たしかにここは 修羅のなぎさ

 

宮沢賢治 「イギリス海岸の歌」〉

 

 

 

「イギリス海岸」とは、花巻に流れる北上川と瀬川の合流点、ちょうどその西方に位置する川岸を指します。

 

賢治さんの時代には、まるで白亜紀ドーヴァー海峡を彷彿させるような白い岩場がずうっと青白く連なっていました。

それで、彼は「イギリス海岸」と名づけたのでした。

 

f:id:misatohayashi:20130920151238j:plain

f:id:misatohayashi:20130920151352j:plain

 

 

 

 

実際はドーバー海峡の岩質は石灰岩で、北上川とは異なるものですが、太古に思いをはせる賢治さんの想像力の発想点として、こういう素敵な名前を付けたのでしょうね^^

 また、イギリス海岸は銀河鉄道の舞台、プリオシン海岸のモデルとしても有名です。

 

 

f:id:misatohayashi:20130920151400j:plain

 

 

 

 

 

 

物語の「イギリス海岸」は、日記文体で描かれた短編です。

 

夏季の農業実習で当時海水浴にも行けなかった農学校の生徒とともに、まるで外国のバカンスさながらにスイミングワルツを歌いながら川遊びをたのしんでいる様子が生き生きと描かれています。

 

かれらはそこで偶蹄類の化石を発見したり、ビッグサイズのクルミの化石(バタグルミ)を拾ったりして、今は静かに流れている北上川が、大昔は海と陸を何度も何度も繰り返した大地の流転の中にいきていて、自分たちという生命もまた、その流転の一過点にすぎないことを感じます。

 

恐竜や石が大好きだった賢治さんにとって、イギリス海岸は何十万年何百万年も過去の生命の変動に想いをはせる、格好の場所だったのでしょう。

 

f:id:misatohayashi:20140613150045j:plain

 

 

 

 

偶蹄類の足跡。

賢治さんは牛(BOS)と推測しましたが、実際は不明。

近年になってイギリス海岸ではほかにゾウとみられる足跡も川底から発見されています。

 

f:id:misatohayashi:20140613152458j:plain

 

 

 

 

 

こちらの画像は岩手農林高等学校(現岩手大学)に賢治さんが在籍していたとき、学内にあったドイツの地質年代表の一部。

賢治さんの師でもあり、当時の地質学の権威でもあった関教授が持ち帰ったものともいわれております。

学生時代、賢治さんはこの図表を、まじまじと眺めていたのではないでしょうか・・・。

 

 

 イギリス海岸に関しては賢治さんの実弟、清六さんの「兄のトランク」でより精緻に紹介されています。

 

兄のトランク (ちくま文庫)

兄のトランク (ちくま文庫)

 

 

 

 

残念ながら、賢治さんたちが走った美しい泥岩は、今ではダムが建設され水量調節で水の中に沈んでしまい、灌水したときぐらいしかみえません・・・。

 

しかし、川岸の林の中を一人で歩いているときや、のどかな遊歩道を歩いているときなど、時空がゆがめられるような、不思議な感覚に陥ることがあります。

 

f:id:misatohayashi:20130514115834j:plain

 

 

 

賢治さんにとって「イギリス海岸」はもうひとつ、死生観をよびおこすところだともなにかの資料で読みました。

北上川に関してこんな不気味な詩も作っているので、彼にとってこの場所はイマジネーションのガンジス川のようなごった煮の場所であったのかもしれません。

 

 

「ながれたり」 宮沢賢治

 

 ながれたり
  夜はあやしく陥りて
  ゆらぎ出でしは一むらの
  陰極線しひあかり
  また螢光の青らむと
  かなしく白き偏光の類
ましろに寒き川のさま
地平わづかに赤らむは
あかつきとこそ覚ゆなれ
    (そもこれはいづちの川のけしきぞも)
げにながれたり水のいろ
ながれたりげに水のいろ
このあかつきの水のさま
はてさへしらにながれたり
    (そもこれはいづちの川のけしきぞも)
明るくかろき水のさま
寒くあかるき水のさま
    (水いろなせる川の水
     水いろ川の川水を
     何かはしらねみづいろの
     かたちあるものながれ行く)
青ざめし人と屍 数もしら
水にもまれてくだり行く
水いろの水と屍 数もしら
    (流れたりげに流れたり)
また下りくる大筏
まなじり深く鼻高く
腕うちくみてみめぐらし
一人の男うち座する
見ずや筏は水いろの
屍よりぞ組み成さる

髪みだれたるわかものの
筏のはじにとりつけば
筏のあるじまみ赤く
頬にひらめくいかりして
わかものの手を解き去りぬ

げにながれたり水のいろ
ながれたりげに水のいろ
このあかつきの水のさま
はてさへしらにながれたり

共にあをざめ救はんと
流れの中に相寄れる
今は却りて争へば
その髪みだれ行けるあり
    (対岸の空うち爛れ
     赤きは何のけしきぞも)
流れたりげに流れたり
はてさへしらにながるれば
わが眼はつかれいまはさて
ものおしなべてうちかすみ
たゞほのじろの川水と
うすらあかるきそらのさま
おゝ頭ばかり頭ばかり
きりきりきりとはぎしりし
流れを切りてくるもあり

死人の肩を噛めるもの
さらに死人のせを噛めば
さめて怒れるものもあり

ながれたりげにながれたり
川水軽くかゞやきて
たゞ速かにながれたり
    (そもこれはいづちの川のけしきぞも
     人と屍と群れながれたり)

あゝ流れたり流れたり
水いろなせる屍と
人とをのせて水いろの
水ははてなく流れたり

 

 (青空文庫より引用 *北上川の洪水をうたったものだといわれています)

 

 

 

f:id:misatohayashi:20130920151642j:plain

 

 

f:id:misatohayashi:20130920152739j:plain

 

 

 

 昨年取材にいったとき、ちょうどイギリス海岸に詳しいおっちゃんがいたので、いろいろお話を伺えました。

上記の昔の北上川のパネルもそこで飾られていたものです。

おっちゃん持参のバタグルミも触らせていただけましたよ。

今でも運が良ければ、発見できるのかな??

 

 

おっちゃんはほかにもいろいろ面白い話をしてくださったので、なんとかして記憶しておこうと宿でメモ!!

すぐ忘れてしまうので、スケッチやメモは必須です。

 

 

f:id:misatohayashi:20140906125629j:plain

 

 

 

 

おっちゃん、ありがとうございました!

 

 

 

そして・・・

賢治さんの物語は読み切り形式のストーリーになってゆく予定です。

 

 

次回は「注文の多い料理店」をテーマに考えております。

 

f:id:misatohayashi:20140624150856j:plain

(写真は6月に受講した講師の先生の私物です。

撮影を許可してくださり、ありがとうございました)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注文の多い料理店」といえば・・・

 

 

 

 

注文の多い料理店 (ミキハウスの絵本)

注文の多い料理店 (ミキハウスの絵本)

 

 

スズキコージさんのこの絵本!!

強烈なインパクトで私のハートに残っております。

昨年世田谷文学館で開かれていた賢治展にて、原画も拝見させていただいたのですが・・・

いやもう、ほんとうにすごかった。。。。

アニミズム的にみなぎる生々しい筆跡。この絵本、大好きです。

 

もしまだ未読の方がいましたら、一度読んだら忘れられないくらいすごいので、ぜひぜひ読んでみてください。

 

(余談ですが、スズキコージさんの押絵で「瓶の中の子供たち」という児童書を小学生の時に読んだことがあるのですが、これも今なおわたしの脳裏に刻まれております・・・)

 

 

 

注文の多い料理店」は、西洋レストラン「精養軒」がモデル。

f:id:misatohayashi:20140907123908j:plain

 

 

(写真は上野の精養軒。ウィキぺディアより)

 

 

明治5年にフレンチレストランとしてオープンし、夏目漱石森鴎外芥川龍之介、菊地寛、谷崎潤一郎・・・近代の文豪たちもこぞって通っていました。

「精養軒」は花巻にもあり、賢治さんも通っていたそうです。^^

 

当時の文豪たちが精養軒をある意味「ステイタスの場」として日記や小説に登場させていたのに対し、賢治さんはまったく逆方向のアプローチから物語を作ります。

まさにグルメの最先端であった当時の高級レストランをモデルに、賢治さんは「喰われる立場」という視点で生存ピラミッドの頂点に立つ人間そのものに挑戦状をたたきつけます。

 

注文の多い料理店」は賢治さんの作品に中でも、もっとも有名で、アバンギャルドな童話のひとつ。

それをデフォルメして漫画という形で描くことにはなんとも言葉にできないプレッシャーがあり、今はおどおどしているさなかですが、スズキコージさんの絵本でエネルギーをがしがしといただきながら、次回はもう少し掲載の間隔をせばめて発表することを目標に、楽しんでがんばります!!

 

また、次回は賢治さんと魂をわけたあの人も少し登場させたいと思っています。

どうぞ楽しみにしていてください。

 

 

 

 

それでは長文駄文失礼いたしました!!

 

 

最後になりましたが、ボニータを読まれた読者のかたへ。

もしご意見・ご感想・取り上げてほしい賢治さん作品などがございましたら下記までおたよりくださると、作者は狂喜乱舞します!

おたよりいただいたすべての方に、イラスト付きのお返事をお送りいたします。

イラストのリクエストも承りますので、どうぞお気軽にお手紙下さると、作者の励みになりますです!!

 

〒102-8108

東京都千代田区飯田橋2-10-8

秋田書店 ボニータGOLD編集部 

森山 真臣乳 まで

 

 

 

 

もうすぐ賢治祭。

花巻がとってもとっても恋しいです。

まだわたしは冬の花巻に行っていないので、いつかは取材でいけたらいいなあ・・・なんて思っています。

ではまた!

 

f:id:misatohayashi:20140613173939j:plain

 

 

ある夏の日の午後、近所で偶然見つけた空。

なんとなく動物に似ていました。

(上は猫・中央はアリクイ?ゾウ?下は孵ったばかりの雛・・・かな?)